日本建築が誇る、
伝統木造組物の優美さを再現
プロジェクトストーリーⅡ
「歌舞伎座(GINZA KABUKIZA)」外装GRC工事


伝統技術と最先端技術を融合。
歴史の継承の一端を担う
もともと歌舞伎座は木造建築でしたが、第二期歌舞伎座が竣工わずか10年で火事で焼けてしまったこともあり、第三、四期歌舞伎座は鉄筋コンクリート造となり、外装部分も基本的にはコンクリートで作られていました。しかし、今回は高層ビル併設するため、構造の種類は鉄骨造です。そんな中、私達に与えられた命題は、「耐震性能を高めつつ、第四期のデザインを踏襲し、かつ木造建築のティテールに徹底的にこだわる」こと。第四期を継承するといっても同じ素材を使うことができません。この要望に対して私たちのチャレンジが始まりました。

劇場の外装は、それぞれ適材適所で素材が選ばれました。まず、平部はPC版。
そして組物や、丸柱など装飾的な部分は、軽量で強靭な当社のGRC(耐アルカリ性ガラス繊維補強セメント板)が採用されました。垂木は、より軽量であるアルミが採用されています。
外観意匠の核となる伝統組物部分に当社のGRCが採用されたのは、軽量、強靭、不燃、高耐久性といった基本性能はもとより、第五期歌舞伎座が最もこだわる木造組物のディテールを再現できる優れた造形性です。しかし、複雑な成型が可能とはいえ、GRCはあくまでセメント製品。木造の持つシャープさ、優美さをどこまで再現できるかが勝負どころでした。
パーツは約2,000pcs。同形状のパーツは平均わずか4pcs

作業プロセスとしては、第四期歌舞伎座を解体前に実測し、その記録に沿って図面化、現地で型取りを行い、石膏による原型加工を行います。その際も、木造のシャープさを鮮明に出すために、棟梁の手により本来木造が持つディテールを再現していきました。そして、GRCの型枠となるゴム型の製造、再度図面調整を行い、実際のGRCの製造となります。 (キャプション-2) ところが、シンメトリーのデザインのはずが、測ってみたら実際は左右が微妙に非対称だったり、型取りしたものと図面の寸法が全く合わなかったり…、新しいものなら寸法通りに進むところですが、今回は伝統を忠実に再現しなければなりません。本物の木造なら現場で木組みが合わない場合、削る作業も可能ですが、GRCを現地で削るわけにはいかないため、事前に四国の工場で一旦すべて仮組みを行い、確認してから現地に運びました。
GRCの再現性を余すところなく出し切った

完成した第五期歌舞伎座は、木造組物に遜色のないシャープな造形美が再現できているという評価をいただきました。工事中は無我夢中で大変さはあまり感じませんでしたが、終わってテレビなどで新歌舞伎座が紹介されるのを見ると、難しくもあり面白くもあり、刺激のある充実した仕事だったと感慨深いですね。変遷を重ねてきた日本の伝統芸能のシンボルである歌舞伎座の歴史の一端を担えたことに誇りを持っています。
歌舞伎座伝統の唐草模様と優美な曲線が映える歌舞伎座正面の唐破風。
外壁平部は PC版、垂木はアルミ、柱・梁・組物は GRCでできている。
プロジェクト概要
工事名称 | (仮称)KS計画新築工事 |
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建設場所 | 東京都中央区銀座4丁目12番地 |
建築主 | 株式会社 歌舞伎座KSビルキャピタル特定目的会社 |
設計・監理 | 株式会社 三菱地所設計 隈研吾建築都市設計事務所 |
施工者 | 清水建設株式会社 東京支店 建築第三部 |
敷地面積 | 6,995.85m2 |
建築面積 | 5,985.20m2 |
延べ面積 | 94,097.40m2 |
構造 | 地下:RC、SRC造 地上:S造(一部CFT造) |
規模 | 地下4階 地上29階 塔屋2階 |
高さ | 建物高さ:137.5m 最高高さ:145.5m |
施工範囲 | 低層外装GRC工事 |
GRC概要
施工範囲 | 低層外装GRC |
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施工面積 | GRC 2,100m2 |
施工枚数 | 晴海通り:1,115pcs 木挽き通り:887pcs |
施工期間 | 2010年11月~2012年2月 |