日本建築が誇る、
伝統木造組物の優美さを再現
プロジェクトストーリーⅡ
「歌舞伎座(GINZA KABUKIZA)」外装GRC工事
2013年4月、3年間の建替え工事を経て新開場した歌舞伎座。今回建築された第五期歌舞伎座は、構造そのものを大きく変えながらも、外観は第四期のデザインを踏襲するという命題が与えられた。日本建築が誇る木造伝統組物のディテールを徹底的に追及した意匠には、同社の「GRC」が採用されている。
伝統技術と最先端技術を融合。
歴史の継承の一端を担う
もともと歌舞伎座は木造建築でしたが、第二期歌舞伎座が竣工わずか10年で火事で焼けてしまったこともあり、第三、四期歌舞伎座は鉄筋コンクリート造となり、外装部分も基本的にはコンクリートで作られていました。しかし、今回は高層ビル併設するため、構造の種類は鉄骨造です。そんな中、私達に与えられた命題は、「耐震性能を高めつつ、第四期のデザインを踏襲し、かつ木造建築のティテールに徹底的にこだわる」こと。第四期を継承するといっても同じ素材を使うことができません。この要望に対して私たちのチャレンジが始まりました。
劇場の外装は、それぞれ適材適所で素材が選ばれました。まず、平部はPC版。
そして組物や、丸柱など装飾的な部分は、軽量で強靭な当社のGRC(耐アルカリ性ガラス繊維補強セメント板)が採用されました。垂木は、より軽量であるアルミが採用されています。
外観意匠の核となる伝統組物部分に当社のGRCが採用されたのは、軽量、強靭、不燃、高耐久性といった基本性能はもとより、第五期歌舞伎座が最もこだわる木造組物のディテールを再現できる優れた造形性です。しかし、複雑な成型が可能とはいえ、GRCはあくまでセメント製品。木造の持つシャープさ、優美さをどこまで再現できるかが勝負どころでした。
パーツは約2,000pcs。同形状のパーツは平均わずか4pcs
外観のディテールはかなり複雑。でも、作ろうと思えばGRCを使い、一体型で作ってしまうことも可能です。ただし、それではコンクリートを流し込んで造った三、四期と変わらず、木質感を出すことはできません。木造は分節されているピースひとつひとつを組み合わせて造りますから、我々も実際の木組みと同様、すべてのパーツをバラバラに造り、伝統木造組物と同じように組み上げました。
パーツの数は約2,000個。およそ500種類で、同じものは4個程度しかありません。この品種の多さに苦労しましたね。木造建築ならではの部位の呼び方を覚えるのは大変でしたが、明確に名前が決まっているので一度覚えてしまうと意思の疎通は非常に図りやすかったです。
作業プロセスとしては、第四期歌舞伎座を解体前に実測し、その記録に沿って図面化、現地で型取りを行い、石膏による原型加工を行います。その際も、木造のシャープさを鮮明に出すために、棟梁の手により本来木造が持つディテールを再現していきました。そして、GRCの型枠となるゴム型の製造、再度図面調整を行い、実際のGRCの製造となります。 (キャプション-2) ところが、シンメトリーのデザインのはずが、測ってみたら実際は左右が微妙に非対称だったり、型取りしたものと図面の寸法が全く合わなかったり…、新しいものなら寸法通りに進むところですが、今回は伝統を忠実に再現しなければなりません。本物の木造なら現場で木組みが合わない場合、削る作業も可能ですが、GRCを現地で削るわけにはいかないため、事前に四国の工場で一旦すべて仮組みを行い、確認してから現地に運びました。
作業プロセスとしては、第四期歌舞伎座を解体前に実測し、その記録に沿って図面化、現地で型取りを行い、石膏による原型加工を行います。その際も、木造のシャープさを鮮明に出すために、棟梁の手により本来木造が持つディテールを再現していきました。そして、GRCの型枠となるゴム型の製造、再度図面調整を行い、実際のGRCの製造となります。 (キャプション-2) ところが、シンメトリーのデザインのはずが、測ってみたら実際は左右が微妙に非対称だったり、型取りしたものと図面の寸法が全く合わなかったり…、新しいものなら寸法通りに進むところですが、今回は伝統を忠実に再現しなければなりません。本物の木造なら現場で木組みが合わない場合、削る作業も可能ですが、GRCを現地で削るわけにはいかないため、事前に四国の工場で一旦すべて仮組みを行い、確認してから現地に運びました。
GRCの再現性を余すところなく出し切った
GRCで再現した組物の中でも、ぜひ見て欲しいのはエントランスの唐破風部分。正面の一番手前に来る破風板の取り付けでは、1枚長さ約9m、重量2tという大きさ・重量ともに今回のGRC工事の中で最大部位。1ピースを10tトラック1台に載せて搬入を行いました。破風板周りは134ピースが取り付けられていますが、この部分は模様が入っている装飾部分が多く、取り付けが複雑で苦労した部分です。さりげなく通り過ぎてしまうところですが、歌舞伎座に行ったらぜひ上を見上げて欲しいですね。
完成した第五期歌舞伎座は、木造組物に遜色のないシャープな造形美が再現できているという評価をいただきました。工事中は無我夢中で大変さはあまり感じませんでしたが、終わってテレビなどで新歌舞伎座が紹介されるのを見ると、難しくもあり面白くもあり、刺激のある充実した仕事だったと感慨深いですね。変遷を重ねてきた日本の伝統芸能のシンボルである歌舞伎座の歴史の一端を担えたことに誇りを持っています。
完成した第五期歌舞伎座は、木造組物に遜色のないシャープな造形美が再現できているという評価をいただきました。工事中は無我夢中で大変さはあまり感じませんでしたが、終わってテレビなどで新歌舞伎座が紹介されるのを見ると、難しくもあり面白くもあり、刺激のある充実した仕事だったと感慨深いですね。変遷を重ねてきた日本の伝統芸能のシンボルである歌舞伎座の歴史の一端を担えたことに誇りを持っています。
プロジェクト概要
工事名称 | (仮称)KS計画新築工事 |
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建設場所 | 東京都中央区銀座4丁目12番地 |
建築主 | 株式会社 歌舞伎座KSビルキャピタル特定目的会社 |
設計・監理 | 株式会社 三菱地所設計 隈研吾建築都市設計事務所 |
施工者 | 清水建設株式会社 東京支店 建築第三部 |
敷地面積 | 6,995.85m2 |
建築面積 | 5,985.20m2 |
延べ面積 | 94,097.40m2 |
構造 | 地下:RC、SRC造 地上:S造(一部CFT造) |
規模 | 地下4階 地上29階 塔屋2階 |
高さ | 建物高さ:137.5m 最高高さ:145.5m |
施工範囲 | 低層外装GRC工事 |
GRC概要
施工範囲 | 低層外装GRC |
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施工面積 | GRC 2,100m2 |
施工枚数 | 晴海通り:1,115pcs 木挽き通り:887pcs |
施工期間 | 2010年11月~2012年2月 |