想像力と技術力が可能にした
有機的アルミシェード。
プロジェクトストーリーⅠ
「資生堂銀座ビル」外装アルミシェード工事
モチーフは「未来唐草」。イメージは"泡"
意匠設計者からアルミシェードの3次元モデルを初めて見せてもらったときは、正直"なんだこれは"と思いましたね(笑)。デザインコンセプトは、資生堂のブランドアイコンである唐草模様をモチーフにした「未来唐草」。イメージは "泡"で建物をふわっと覆うような雰囲気一一。そんな説明がありましたが、複雑すぎて形状を理解するのに時間がかかりました。仮にアルミで立体的な"泡"を表現できたとしても、それを巨大な外壁にどう取り付ければいいのか、初めは想像すらできませんでした。「どうしていいのかわからないけれども、なんとかこのイメージを実現させよう」ということで、手探りで設計がスタートしたんです。
形状自体が複雑なため、最初は3Dプリンターを使って小さな模型を作り、デザインのブラッシュアップと解析を重ねながら、どういうふうに外壁全体にアルミシェードを取り付けるか模索していきました。 なにせ6,200㎡もの外壁を覆うアルミシェードです。パネルの枚数を減らすために大型にすれば、生産拠点が限られる上コストも掛かる。小さいものをたくさん作って繋ぎ合わせれば、溶接の手間がかかりすぎる…。意匠性、コスト、納期、溶接箇所等々、半年ほど検討してたどり着いたのが、幅約1800㎜、高さ1,063㎜、厚さ300㎜のパーツを4つ組み合わせて1ユニットとした、幅1,800㎜、高さ4,250㎜のパネルです。
総計1,016枚のパネルは、日本、韓国、中国の3カ国で、半年間かけて製造しました。鋳物なので砂を使うんですが、その砂も粗さ、細かさが違うため、徹底した品質管理が求められました。我々設計側もいろいろな難しさがありましたが、3カ国の製造現場も大変苦労していました。
美しさと機能を共存させる、あくなき挑戦
そしてもう一つの難題が、アルミシェードと外壁を接続するジョイント部分。外装なので耐震・耐風圧性能はもちろん、経済性、重量、そして繊細なアルミシェードの意匠を尊重する形状であることが重要視されました。 3Dモデル図を見ても分かる通り、原設計案から最終案は全く別の形状になってしまっています。最終形にたどり着くまで、毎週のように提案を持って行ったり、原寸模型を作って見てもらったりしましたが、なかなかOKは出ませんでしたね。 今回に関しては形状がとても複雑であることの難しさに加え、外観的にジョイント部分が目立たないこと、建物内側からの視線、陽の光の移ろい等々、機能性+さまざまな美的要求を妥協せずに実現するというところが本当に難しかったです。
クリエイティブと技術の融合
アルミキャストを使ったファサードは珍しくはありませんが、資生堂銀座並木ビルは難易度の高い仕事でした。"これができ上がったらすごいことになるな"と自分でも思っていたので、完成した時は感無量でしたね。 当社にご相談いただく案件は、どこの業者もやったことがないし、見当もつかないような建築物の相談が多い。試行錯誤の連続ですが、逆にいうと断トツで新しい建物や技術、デザインに触れられる機会に恵まれています。今回の資生堂銀座並木ビルは、イメージ通りの、いえイメージ以上の建築ができたと自負しています。完成した時の達成感が、この仕事の大きな醍醐味ですね。
プロジェクト概要
工事名 | (仮称)資生堂新並木通りビル新築工事 |
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建築地 | 東京都中央区銀座7-7-5 |
建築主 | 株式会社 資生堂 |
設計 | 株式会社 竹中工務店 |
施工 | 株式会社 竹中工務店 |
新築工期 | 2011年12月16日~2013年7月31日 |
建物用途 | 事務所、集会場、飲食店舗、物販店舗 |
構造 | S造、一部SRC・RC |
規模 | 地下2階,地上10階,塔屋2階 |
建物高さ | 47.95m(塔屋57.95m) |
外壁 | 低層部:大理石本磨きt=30 高層部:PC板+無機質コーティング シェード(外装):アルミキャストt150・300 クロム酸化皮膜処理+フッ素樹脂塗装+パールクリア塗装+光触媒コーティング |
アルミキャスト概要
施工範囲 | 外装アルミキャスト |
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施工面積 | アルミキャスト 6,200m2 |
施工枚数 | 東面207pcs 南面270pcs 西面187pcs 北面348pcs |
施工期間 | 2011年10月~2012年3月 |